読み・きょうみとんがりやま
場所・姫路市広畑区才
撮影・2011・03

1467年。

嘘みたいな話ですが、ここ広畑の山から、
応仁の乱で燃え盛る京都がよく見えたそうです。

だから京見山(京の都が見えるの意味=燃えてるから)

「お~!すげ~えらいことになっちょるよ~!」ってカンジだったんでしょうか?

ともかく京都を灰塵に帰した大戦争を、
ここから高みの見物していたってコトを記念して名前をつけたってわけです。

ほとんど自分トコのせいなのに。

関西随一の穀倉地帯で、古くから交通の要衝でありながら、
平成ならぬ平安の安倍ちゃんにイチャモンつけて追放された芦屋道満
大河ドラマに抜擢されるまでは信長の野望をやってるヤツしか知らなかったろう地味目の黒田如水とか、
マイナーな人物しか世に出てない姫路ですが、
教科書に乗るような事をやらかした連中がいるんですよ。実は。

播磨のホープ、赤松氏です。

足利氏を助けて、室町幕府の成立に尽力した?

たしかに最大功労者の一人なんですが、円心の名前は華麗にスルーされることが殆どです。
ま、言っても一武将。関ヶ原でなら島左近ぐらいの位置なんで、仕方ないといえるでしょう。

でも嘉吉の乱は違います。

何せ主役。
しかもやらかしたのが将軍暗殺という、
日本の歴史上でも3回しかないビッグイベント。

大仏殿焼き討ちとかエゲツないイベントが目白押しなのに、
なぜか自爆ばかりが取り上げられる松永久秀と、
出家しておきながら髪を下ろさず、見るからにヤル気満々だったのに
見逃されてついに決行しちゃった北条家の踊る人形こと、
公暁くんという濃い面々の仲間入りしたことがあったんです。

まあ、それが原因で勢い余って滅亡しましたが。

そのまま大人しくフェードアウトしてくれりゃ、
世の中の為にもなったんですが、其処は空気を読まない播磨人気質。

御家再興を企てて、一発逆転の大勝負に出ます。

その方法は・・・
南朝に奪われた三種の神器の一つ八尺瓊の勾玉を取り戻す。
だめだこりゃ・・・・

小説になってないのが不思議なくらい、無茶苦茶な展開ですが、
赤松遺臣たちは南朝の総本山に殴り込みをかけ、
なんと三種の神器の奪還に成功します。

奇跡ってあるもんですね。、ホント。
そうなると困ったのが幕府。

ただでさえ赤松をぶっ倒した功績で強大な権力を手にいれていた山名氏
2大勢力の片割れを担っている状況で、こいつ等に特赦でも出したら、
とんでもないことになるのはわかりきってます。
かといって国民栄誉賞ものの功績に、何もしてやらん訳にもいかんし・・・
そんな中で山名氏の対抗勢力、細川氏が黙っている訳はありません。

「ようやった!加賀をあげちゃうよ」
と太っ腹な采配を後押しました。
その結果は、もう皆さんおわかりですね。
そう!150km離れた、ちっこい低山からでも眺められる
10年にも渡る長く悲惨な戦争
と相成った訳です。

つまり自分とこの大将がしでかした火事の
高みの見物と決め込んでた訳ですよ。

質が悪いたりゃありゃしない。
そして2011年
その山がボーボーと燃えました。
因果応報?
56ヘクタール、東京ドーム約12個分の面積を焼く大火事になりました。

もちろん、不謹慎このうえない穴居人は、見物に行きましたよ。ええ。

煙ばかりで様子が伺えないので、山に登っちゃおうかと思った矢先(危険)、
隣で見物してたおばちゃんがボソッと言いました。

「歩きタバコなんぞするからじゃ」
これは聞き捨てなりません。

山を愛するハイカーが
歩きタバコなんてするはずがないじゃありませんか(断言)!

一山好きとして、この疑いは晴らさねばなりませんぞ。
ってワケで、原因を突き止める為、鎮火した山登り決行です。

まあ、中学生の仕業という噂は聞いてるので、
疑いを晴らすのは容易いに違いありません!
待ってろ、おばちゃん!
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というわけで、夢前中学校横の、天満神社から登りはじめます。
中学生が犯人なら、ヤツラの行動範囲から十中八九、夢前中学生に違いない。
なら最寄はここからだろうと山をかけた訳です。

穴居人は、この近くに引っ越してくるまで、夢前中学校ってのは、
夢前町にあるんだと思ってました(当然)
ってかここのおかげで、その名前が夢前町では使えなかったんでしょうが。

名前といえば、京見山、どこにでもありそうな山名なのに、姫路にしかない。
こりゃ、ちょっとしたミステリですよ。
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おお!

遠くから見ているのと違い、意外と植生が生き残ってます。

見た目、死の山と化してましたから、素直に感動です。
いや、久しぶりの山登りなもんで、ホント気持ちいい、森林浴ですよ。
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2分後には地獄絵図ですけどね。

ここまでとは・・・

いろんな場所で、山火事現場は見てきましたケド、これほどなのは、初めてかも・・・。
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何せ金属の柵がこの有様ですからね。
火力の凄まじさを物語るってもんです。

しかしこの激しさ、天満神社から、15分も登っていないのに・・・・
いや、神社にまで類が及ばなくて何よりです。
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・・・・ってかこの場所?

緑が残ってる?

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くぼみを中心に、上は燃え尽きて・・・・
下には類焼してない・・・?

これって・・・・
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ああ、なんとなくやっちゃいました。

ここがグラウンド・ゼロのようです。
ビンや缶を燃やすと、中の空気が破裂したりして、けっこうエキサイティングなんですよね(遠い目)

今、思うとよく生きてたなと感慨深いモンがあります

ともかくここで火遊びをしていて、燃え広がったに違いありません。。

学校裏から出火したと聞いていたので、山道沿いだとは思ってましたけど。
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境界域を表示する看板もご覧のとおり。

出火が春休みの正午って事もあって、中学校には40人近くしかいなかった事もあり、避難もスムーズ。
何せ、自分のトコの生徒がやらかしたと直感した先生が
山に駆け上がったっていうんですから、
ある程度、余裕はあったんでしょう。

さすがに陸上自衛隊災害派遣
要請するような事態は想定してなかったとは思いますが。
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見てるか、おばあちゃん。
山を愛するハイカーが歩きタバコなんかするハズがないんだよ。

そりゃ豪州じゃ200人も死んじゃう大惨事になっちゃったり、
アメリカじゃポイ捨てで死刑になるヤツとかもいるけど、

日本じゃ中学生の火遊びが原因なんだよ。
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謎は解けたも同然。

しかし、ここまで来たからには、最後まで登っちゃいましょう。

中学生の不始末の惨状をとくとご覧あれ。

と、目の前に中学生らしき人影が。
もちろん、厭らしい大人成長した穴居人は、

「ここ、すごいね。どうしてこんなことになっちゃったの?」

と何も知らないみたいに白々しく聞いてみます。
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「歩き煙草のせいらしいよ」

え?
ここにきて、どんでん返し?

そりゃ、ネットで情報収集したときは、煙草の不始末説9割でしたけど・・・

やはり近所の噂はアテにならないのか!?
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中学生らしい少年たちと別れ、トンガリ山山頂へ。

余談ですが、このトンガリ山、現在なぜか伏龍山という
流行りの中二病的な名前の標識が立っているらしいです。

堂条ヶ開山という標識も立ってるそうで、
登り口の標識はトンガリ山のままだから、地元民じゃない登山客は、
今、自分がどこにいるか分からなくなりそうです。

ってか堂条ヶ開ってここの字のはずだから、地名であって、山名じゃないんですが・・・
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と、山頂で海風特有の強い吹き上げに晒されていると、
見るからに地元民っぽい、軽装備のおばちゃんが登ってきます。

もちろん、厭らしい大人な穴居人は、何も知らない風に、

「ここ、すごいですね。
どうしてこんなことになっちゃったんですか?」


と白々しく聞いてみました。
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詳しく教えてくれました。

まず一言。

中学生の方、ごめんなさい。

犯人はどうやら小学生らしいです。しかも1年生。

火事があったとき、山を駆け上がった中学校教師も、
自分とこの生徒がやらかしたと思っていたらしいですが、実は、もっと小さな子だったという訳です。
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岡山や徳島からもヘリを動員した大規模消火作業の費用は4千万円近くになるとか。
もちろん、少年の親は支払い拒否。ウヤムヤになりそうな勢いだとか。

どっから、そんな話を仕入れてくるんだと、関心しましたが、今までで一番、信憑性が高そうです。

というわけで、見てるか、おばあちゃん
山を愛するハイカーが歩きタバコなんかするハズがないんだよ。

うんうん。
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と、まあここで帰っちゃ芸がないので、穴場の姫路名物(勝手に)、
「穴場の夜景スポット」認定のため、2時間ほど山頂に居座ることにします。
山火事で遮るものがないので、さぞや見晴らしがいいでしょうし。

期待できます(不謹慎)。

ま、遮るものがないので、吹き荒ぶ海風も容赦ないんですが。

トムラウシ山の二の舞になりそうな寒さだ・・・
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月が出始めて、もう夜の片鱗が顔を出してます。

しかし、手前の暗いこと。

はりま勝原の影響で栄えてきたとはいえ、飾磨近辺とこの明るさのギャップ。

やはり田舎の格差はこんなものなのか。
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網干方面になると顕著です。

大津イオンがあまりに目立ちすぎる・・・。

一商業施設がそこだけ火事になったみたいに、明るすぎる・・・

都会じゃまずお目にかかれないので、まあこれも姫路らしい光景ですかね。
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はい、日没。

いやあ凄い。

いろんな山の夜景を見てきましたが、迫力が違います。
何せ視界を遮るものが(自主規制)

山道も登りやすいので、素直にオススメできる夜景です。
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流行りの工場夜景見学も、こういう角度でしたら、もっと面白いかも。

空撮一歩手前なカンジ、なかなかな光景です。

ヘリよりは安上がりなんで、登る労力分の価値はありま.すぜ。
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てな訳で、応仁の乱の火事が見えたから名前がついた京見山(おさらい)。

その呪いか実は、今までも何度も燃えてるそうです。15年前にも、30年前にもあったとか。

おばちゃんは、朗らかに語りました。

「だから、こんなに登山道があるの。
道があれば、境界ができる。
もし火が燃え広がっても、
道で隔ててしまえば延焼しなくなるからよ。

京都の街に大通りが多いのは、このためよ」


おお、京都。ここで京都ですか。
つまり、ハイヤーがバスバス自然を打ち壊して、
縦横無尽に作りまくった山道が、結果的に山を守るというわけです。

話のつながりにちょっと感動した日でした。
まあ、最後の話は願望的フィクションなので、
無理矢理なんですがね(最悪の締め)