読み・おおきこうざん
場所・姫路市飾東町佐良和
日時・2017・11
日本には、この広い世界でも中々お目にかかれない価値観、「滅びの美学」ってものがあります。

基本的に負けて死ぬんですから、美しいもクソもないと思うのですが日本には昔から確かにあります。

そりゃ喚き散らしながらのたうち回って、他人を呪いながらみたいな醜い死に方はまっぴらゴメンですが、後腐れなくキレイに死ぬってだけなのは、穴居人はどうも納得が出来ないんですよね。

どうせ死ぬならせめて何か一つでも・・・死に花を咲かしたいものです。
だから無駄死にに終わる話は、どっちかっていうと好きじゃないんです。

田舎のヤンキーが自警団気取りで暴力沙汰起こしまくってたら、戦力不足のお上に取り上げられて全滅したあげく(ほとんど内紛)、大河ドラマにまでなった赤穂浪士ファンとか、

キレやすいお殿様の配下らしく、「お家再興出来なきゃ討ち入りするぞ☆」と散々恐喝してたせいで、引っ込みがつかなくなって全滅したあげく、大河ドラマにまでなった赤穂浪士とか、素直に好きじゃないんですよ。

それなのに・・・・・それなのにです。
この鉱山は穴居人が随分と昔に知って以来、ずっと気になって仕方がなかったのです。

ほんのちょっと前に、おじいちゃんが一人で掘っていたと言うこの鉱山が。


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久しぶりにやってきました、佐良和。

たんくらさんのブログで城見台の南西にあると書いてあったのを見てから、ここに来るのは3回目になります。

そんなに大きな山でもないですが、中々見つからないんですよ、鉱山。

まさかもう埋まってる?

穴探訪にはまああるあるネタなんで、恐ろしい。

いつも起点にしてるのはこの大歳神社。

古老という表現からして、体力的に(失礼)
そんなに人里から離れた場所で掘ってないと思うので、老人憩の家の戦前バージョンみたいなこの周辺だと踏んでます。
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山肌はこんな感じ。
最初の探索でものすごく人の手が入っているのがわかりました。

広大な畑、山の裾野に点在する溜池、人工的な杉や竹の植林、しっかりとした山道と、それがあるマイナー山にはありがちな鉄塔。

だから2回目の探索はすんなりと見つけることが出来るだろうと思ってました。

何せここの鉱床は金や銀ですからね(目の色ギラギラ)

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しかも掘っていた記録が残っているのは、比較的最近の昭和38年

商売にならなくても、村の中で金やら掘ってたとなれば、おじいちゃん、おばあちゃんの世代なら話題にならないはずがない。

幸い、穴居人は知らない老若男女に気軽に話しかけられる
今の時代通報スレスレのメンタルの持ち主なので大丈夫です。
(何が大丈夫なのか)

ちょうど神社前の家で焚き火をしていた夫婦らしき人に直撃してみました。

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「そんなものはない」

はい、ストレートに一番ありがたくないお言葉をいただきましたよ。
田舎のおじいちゃんおばあちゃんは話しかけやすい代償に、エンカウント率が低いので話しかけようにも他の人が見当たらない。

チャイムを鳴らすまでは厚かましくなれないので、とりあえず探索してみる事に・・・・

見つかるのは、とりあえず田舎の山裾あるあるの廃バスぐらいですが。

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おお、ちゃんと姫路市営って残ってる・・・

今はなき姫路市営バスの話はいつか書いてみたいもんです。

ヤクザ一歩手前の石見市長のレジェンドの中でも、一際、危ない話がてんこ盛りですからね。

ちょうど息子さんも引退するみたいなので、親父の破天荒ぶりの本とか出して欲しいもんです。

10冊は買います(本気)。

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さて1回目は日暮れ前で山登りは残念していたので、2回目は本格的に捜索といきますよ。

情報がまったく得られなかったのは辛いですが、ズリ山の一つでも見つけられれば、簡単に行くはずってもんです。

後の祭りですが、その時はその日無収穫で、5年ぐらい放置するなんて思いもしませんでしたよ、はい。

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林道はご覧の通り、踏み跡もしっかりしている安心仕様。
鉱山の為に作られた訳ではないのはわかりますが、探索には大助かり。

え?何で鉱山の為の道じゃないってわかるかって?

昭和36年に報告された兵庫県の資料にここの規模が載ってるんです。
曰く、品位は金8g/t,銀90g/tだとのこと。

素人には何の事かさっぱりわかりませんが、ネット情報によると採算ラインをトントンに出来るのが金10g/t以上との事なので、ここの鉱山の規模がおじいちゃんが一人で掘っていた程度なのがよくわかります。

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規模がさっぱりなおかげか、山の麓にこんな風にしっかり立派な規模の溜池があるのに地元の人も知らない。

普通に商業ベースの規模なら、田中正造よろしく鉱毒バリバリで話題にならん訳もないですからね・・・。

いやぁ、堤もしっかりしてるし、気合入ってますわ。

本当にあるのか不安になってきました。

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山に分け入っていくとそれっぽい石積みとかももあるにはあるんですが・・・


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ほらほら、それっぽいでしょう?

素人目に見ても、何か入ってそうな石灰質。

後はその辺にぽっかり穴でも期待はしたいもんですが・・・


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しかしどこまで行っても、唯の平凡な雑木林が続くばかり。

穴居人が人に進めるタイプの人間なら、「普通に面白くないから、やめといた方が良いよ」と素で言えちゃうような正直、何の変哲もない山でした。

2回目も結局、ものすごい徒労感にやる気を失ってトボトボ帰りましたよ。

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で、今回が3回目。
どうして来る気になったと言えば、昔は信長の野望にも出てこなかった程度のマイナー武将、どっちかっていうと陰気なエピソードに事欠かない姫路出身のあの男が、大河ドラマになったおかげです。

注目されるようになったからか、関連書籍もぞくぞく発売され、開始十数話でとっとと巣立っていった播磨に注目した奇特な本もちょこっと出てきました。

穴居人としては、正直九州に行ってからとか興味ないので、地元辺りのエピソードばかり読みふけってました。
そしたら黒田官兵衛目薬伝説」という本に、なんと大喜鉱山の記述があったんです!
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近くの歳徳神社が「足なえの神様」、何故か戦で足を負傷して死んだくせに、八つ墓様とは違い、呪うどころかご加護を残していった優しいお侍さんの伝説と、友達(大河ドラマでは)に幽閉されてたはずなのに、開放されたらあら不思議、幽閉場所の環境が人体に厳しすぎて、足がやられてしまった黒田くんに絡めて載っていたんです。

そこに「近くに大喜鉱山というものがある」との記述が!
なるほど!神社違いやったんかっ!
山一つ向こうやないかっ!

思いもよらぬ出会いに半ば興奮気味にまたやって来ちゃいました!

今度こそは!

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そして、本の記述に出てきた歳徳神社へ。
今回は恥を忍んで社務所のチャイムを鳴らしました。
気の良さそうなオバちゃんが出てこられて事情を話したところ、「私は嫁いできたからわからへんけど」と言った後に何かを思いついたご様子。

神主さんの登場か!?
と思いきや・・・・

「自治会長さん呼んできます」

き、来た!
地域の最長老に違いない、自治会長さん!!
口では「そんなん悪いですよぉ~」と言いながら、心ではほくそ笑んでましたよ、はい。

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神社で待つこと、ほんの15分。
自治会長さん登場!!

何かホントに取材みたいになってきましたぜ!

いぶし銀な感じのナイスミドル町の隅々まで知ってそうな理知的なお方でした。

穴居人は恐れ多い感じで、「黒田官兵衛目薬伝説という本で読んだんですが」と前置きします。
小狡いですよ、この男。
まるで大河ドラマブームで初めて情報を知ったかのように、初心を装ってますよ。

「その本に載っていた、大喜鉱山というものを探してまして・・・どうも地元の古老が一人で掘ってたと書いてあったんです」

過去、2日もかけて山の中を這いずり回ってたとは思えない、今日初めてここに来ました感。

我ながら策士
これで自治会長さんも心置きなく詳しく説明出来ることでしょう。
ただの歴史マニアみたいなもんですよってな感じで。

さあ、根掘り葉掘り聞いちゃうぞ!
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「そんなものはない」

あ・・・はい、ストレートに一番ありがたくないお言葉をまた頂戴しました・・・

「50年、ここに住んでいるが聞いたこともない」

あ・・・そ、そうですよね・・・

やっぱり、ないのか・・・・

こっちの落胆っぷりが伝わったのかどうかは定かではありませんが、歳徳神社の謂れ、姫路城の鬼門としての関係、近くの丘のそれはそれは面白いお話(これはこれで記事にしたい)。

沢山、1時間近くお話いただけました!
ホントに感謝です(本心)!

心は晴れやかにはなりませんが、その・・・この話しが聞けただけでも収穫かな!
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そしてトボトボと元いた大歳神社へ戻る穴居人・・・・

ん?近くの畑に今までなかった人影が・・・・
往生際が一際悪い穴居人としては、ここは話しかけない訳には行きますまい。

「あの・・・・この辺りに、大喜鉱山っていうトコが・・・」

すっかり意気消沈しながら聞いてみました。
気分は駄目元。

答えはやっぱり、
「そんなものはない」
しかも、
「70年、ここに住んでいるが聞いたこともない」
ダブルインパクトで死体撃ち来ましたよ。
年数増えてるし

「穴とかは・・・見たことないですかね?」

最早、涙目状態で食い下がってみますが、どうせ無理でしょう。
そう高をくくっていたら、おじいちゃんはこう言ったんです。

「そういえば、山の上に防空壕があったなぁ」

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「どの辺ですか!?」

と詳しい位置を聞き出し、ほぼ頂上近くまで一気に駆け上がりました。

見つけましたよ・・・・

感無量です。苦節10年・・・やっとこさたどり着きました・・・

だって防空壕が山の上になんてあるはずないんです。
空襲があって急いで逃げ込まなきゃいけないような場所が、山の上にある訳がないんですよ!

十中八九、大喜鉱山跡地だと思いました。

そして・・・そして見つけたんです!

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穴の大きさはしゃがんでやっと潜れるくらい。

風化で辺りにズリ山もなく、登山道からは少しばかり外れている。
ご老人の記憶がなければ、たどり着けなかったでしょう。

典型的な露天掘りで斜め垂直に掘り進まれてます。

奥行きは結構、ある・・・?

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試しに石ころを転がしてみると、遥か奥までコロコロと転がっていきました。
これに入るにはちゃんとした装備が必要だな・・・

まあ、あるとわかっただけでも御の字なので、今日はこれぐらいで。

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というわけで
おじいちゃんが一人で掘っていたということが見た目でもよく分かる小じんまりとした鉱山跡でした。

もちろん、おじいちゃんの後を継ぐ者は現れなかったので、(村の人間が誰も知らないレベルで)趣味レベルの施設だったのかも知れませんが確かにありました。

結局は全て、無駄だったおじいちゃんの夢の跡。
何の変哲もない縦穴ですが・・・どこか哀愁じみた愛おしさを感じた、穴居人の思い入れだけが熱い穴場でした。

素直に見た目以上のものはないので、オススメはしませんが「滅びの美学」な無情感に浸りたい人は、一度訪れてみてはいかがでしょうか?

「何で、こんなトコ来たんだろ」

って徒労感も立派な無情感ですから(逃げ道)。